はい、あります。
2度ほどありますね。
正確には一度はエンジンに不具合が起きて止めた、もう一度は自然に止まったと言う感じですね。
どちらも4発エンジンでしたので緊急事態は宣言しませんでした。
4発エンジンにとって3発エンジンになる事は異常事態ではありますが、緊急事態ではありません。
ただ2発エンジンの場合に1発エンジンになると即、緊急事態ですので最寄りの空港にすぐに降りなくてはなりません。
一度目はDC8で国内線を飛行しているときでした。
突然、Fire(エンジン火災)の警告がなりだし、計器を見るとナセルテンプと言うエンジンを覆うカバーの中の温度が以上に高温になっていました。
そのままでは本当にエンジン火災になりかねないので、エンジンは動いていましたが、チェックリストに従い、エンジンを止めました。
エンジンを一つ止めたまま着陸し、駐機後、エンジンのカバーを開けてみるとなんと大きなパイプがゴロンと落ちてきました。
エンジン入り口のカウルの表面が凍結しないようにエンジンからの熱をカウル周りにパイプで引いているのですが、
そのパイプが外れてエンジンのホットエアーがエンジンカバー内に充満したことが原因でした。
着陸したのは伊丹空港でしたが、取りあえず応急処置をして、帰りの羽田便は乗客を乗せずにフェリーで羽田に戻りました。
もう1件はジャンボ(B747)でアンカレジから成田に向かっているときでした。
アンカレッジ-成田間はNOPACルート(ノパックルート)と言う5本の飛行コースがあるのですが、
その一つを飛行しているときに突然エンジンが止まりました。
何も前兆がなく自然にエンジンが止まるのをフレームアウトと呼んでいます。
原因はアイシング(結氷)とかいろいろ考えられるのですが、良くわからない場合が多いです。
4発エンジンの飛行機が3発エンジンになった時には、通常、その時に維持していた高度は保てなくなります。
他のエンジンをなるべく高出力にして、3発エンジンで維持できる高度までゆっくり降りるのですが、
これをDrift Down(ドリフトダウン)と言います。
高度を降ろす承認を直ぐに得られれば良いのですが、太平洋上では少し時間が掛かりますので、
高度承認が来る前に高度を下げて行かなければなりません。
ただ同じコースに何機も飛んでいますので、そのまま降りると衝突の危険がありますので、
そういう時の降下にはルールがあります。
そのルートから一定の距離を左か右に離れてそのコースに並行に飛行しながら高度をおろします。
この時はエンジンにはダメージはないのでドリフトダウンをしているときにリスタート(再始動)を試みました。
その結果、無事にエンジンはスタートし、その後何事もなかったように飛行して成田に到着しました。
やれやれです。
エンジンが止まる事はそれほど多いことではないです。
一度もそのような経験がないままパイロット人生を終える人がほとんどだと思います。
そのくらい飛行機のエンジンの信頼性は増しています。
離陸時(特にV1と呼ばれる離陸か中止を判断するスピードの近辺)にエンジン故障が起きることが、一番厳しいのですが、この時にエンジンが故障すると言う不運な出来事に遭遇するパイロットは本当に少ないと思います。
ただしシミュレーターではこの訓練は嫌と言うほど行います。
ですのでエンジンが止まってもこの手の訓練は十分に受けておりますのでご安心ください。