エアラインパイロットとして空を飛ぶには何種類ものライセンスが必要になります。
(パイロットのライセンスは正確には技能証明と呼ばれていますが分かり易いように免許と表現します。)
ど素人から旅客機に乗務するまでに必要な免許の簡単な流れを説明します
まず、一番最初にとるのは航空機操縦練習許可証(Student Pilot Certificate)です。
これは名前の通り操縦するための許可証ですが、これは申請するだけで手に入れることができます。
この許可証を得た後に飛行機の操縦練習を行うわけですが、一番最初に目指すのは「自家用操縦士免許(陸上単発タービン/ピストン」です。
この訓練の間に管制官との交信に必要な「航空級無線通信士」と言う無線資格を取らなければなりません。
無事に自家用操縦士免許を取得すると次に目指すのは「事業用操縦士免許」です。
エアラインパイロットになるためには最低このライセンスは必要です。
と同時に計器に頼って飛行する場合に必要な「計器飛行証明」、及び双発以上の飛行機を操縦するために必要な「陸上多発タービン/ピストン」の免許を取らなければなりません。
航空大学校や日本航空、全日空等で行う初等訓練では上記4つの免許を取ってを卒業します。
(自家用操縦士の免許は事業用操縦士の免許を取得したら返納します。)
いよいよエアラインに入社、若しくは基礎訓練所を卒業してエアラインの現場に立つわけですが、上記のライセンスだけではエアラインの旅客機に乗務することができません。
旅客機のような大型機に乗務するためには飛行機ごとに定められた型式限定と言う訓練を受けなければなりません。
たとえばB747-400に乗務する場合はB747-400の型式限定免許、B777に乗務する場合はB777の型式限定免許のように飛行機の種類によってそれぞれ免許が必要です。
この免許はシミュレーターを使って訓練を行います。
昔はシミュレーターの試験に合格した後に沖縄の下地島や海外の訓練飛行場で実機による実技訓練と審査を行っていましたが、最近はシミュレーターの性能が向上したために実機の訓練はありません。
この型式限定の免許を取って晴れて旅客機に乗る免許はそろいますが、これは法的な資格ができただけでまだエアラインの旅客機に乗務できるわけではありません。
その後副操縦士の場合は会社規定で定められている副操縦士の路線訓練をして航空会社の査察操縦士による審査に合格しなければなりません。
機長の場合は同じく路線訓練を行いますが、審査は副操縦士と違って国の審査を受けなければなりません。
(機長の場合は事業用操縦士免許ではなく、機長訓練によって定期運送用操縦士免許を取得しなければなりません。)
これでやっと乗務できる状況ができましたが、国際線に乗務する場合はさらに「航空英語証明」と言う英語の能力を証明する資格が必要になります。
また第1種航空身体検査に合格していなければなりません。
まとめますと機長として乗務するときに以下のライセンスが必要になります。
・定期運送用操縦士免許(副操縦士の場合は最低でも事業用操縦士免許)
・乗務する飛行機の型式免許
・計器飛行証明
・航空級無線通信士
・航空英語証明(国際線の場合)
・第1種航空身体検査証明
上記は国で定めるライセンスですが、この他に会社で定める飛行ルートごとに必要な路線資格と言うものが必要になります。
これで試験は終わりではなく機長の場合は半年ごとにシミュレーターによる技量審査、及び1年ごとに路線審査を受けなければなりませんが、これはまた次の機会にしたいと思います。