飛行機が離陸するときにエンジンの推力を上げますが、いつも推力を最大にして離陸している訳ではありません。
飛行機の重量は乗客の搭乗数や貨物の搭載量、また飛行する距離によって大きく変わります。その重量と滑走路の長さによって離陸推力を変えています。
飛行機の重量、滑走路の長さにによって離陸推力を変える。
満席や貨物の搭載量が多い時、且つ長距離を飛ぶ場合は飛行機の重量が重くなり、滑走路の長さによっては最大推力が必要になるときがあります。
一方、乗客が少ない時や短い距離の飛行では燃料をたくさん搭載する必要がなく重量が軽いため最大推力では推力が大きすぎる場合があります。
この様な時の離陸は最大推力が必要ないので最大推力の数十%減で離陸推力を決めています。
通常、Boeingの飛行機ではTO2、TO1、TOと通常3種類の離陸推力の設定があります。
これはReduced Thrust Takeoffと言っています。
TOは最大離陸推力を意味しますが、たとえばTO1はTOの10%少ないパワー、TO2は20%少ないパワーでを意味します。
これは主にエンジンのライフタイムを伸ばすために行っていますが、パイロットしてもマイルドな飛行機の動きや上昇になりますので若干操縦が楽になります。
国内線ではほとんどの場合、一番低い推力であるTO2で十分ですが、実はこの減じた推力を使ってはいけない時があります。
それはどういう状況かというと離陸経路上にウインドシェアと言う風の変化がある時です。
わかりやすい例を挙げると、積乱雲が近づくと急に風が吹き、土砂降りの雨になる時がありますが、そのような状況の時の上空の風の方向と強さはめまぐるしく変化しています。
このような時の離陸は避けるのが原則ですが、まだ積乱雲の影響がそれほどでもない時にウインドシェアの予防として減じた推力ではなく、最大推力を使う時があります。
もう一つ、離陸推力の決め方がある。
それはAssumed Tempreture Method(アシュムド テンプレチャー メソッド)と言うものです。
この方法を簡単に言うと仮想温度を設定し、飛行機の離陸に滑走路を目いっぱい使って離陸できる推力を使用するという事です。
飛行機のエンジンの推力は温度が高くなればなるほど減少します。
推力が減少すれば離陸に必要な滑走路も長くなります。
離陸する滑走路を目いっぱい使う時の温度を計算し、その温度をもとに離陸推力を決めていきます。
飛行機の離陸方法には2種類がある。
飛行機の離陸にはStanding T/OとRolling T/Oの2種類があります。
Standing T/Oと言うのはブレーキをかけたまま(止まったまま)離陸推力まで推力を上げ、Powerが安定したところでブレーキをリリースして滑走を始める方法です。
この方法は滑走路に余裕がない時や冬季運航の悪天候下で行う方法で一般的ではありません。
通常、行われている離陸の方法はRolling T/Oです。
これは滑走路に入った後、滑走路上に止まることなくPowerを離陸推力に上げ離陸する方法です。
その際いっきに離陸推力に上げるのではなく2段階でPowerを離陸推力まで上げます。
その理由はアイドルからいっきに離陸推力を上げるとエンジンの加速にばらつきが生じ、飛行機の方向性に問題が生じる場合があるためです。
一度滑走路上に止まる事もありますが、この理由の多くは離陸許可を待っているときです。
エンジンをある程度まで加速させ(大体Thrust leverを垂直の位置になる様にセットします。)、Powerが安定していれば
その後は各エンジン均等に離陸推力に加速していきます。
飛行機に乗った時にエンジンの音に注意すると2段階でPowerを上げているのがわかると思います。