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飛行機関連

離陸に必要な推力の秘密:飛行機が空へ飛び立つ仕組みを解説

1.離陸推力とは?

離陸推力は、飛行機が地上で加速し、離陸速度に達するために必要なエンジンからの力のことを指します。
航空機が離陸する際には、エンジンはその時に設定された最大の出力を発揮し、飛行機を滑走路上で前方に押し出します。

エンジンから生み出される推力は、飛行機の速度を増加させ、やがて翼が揚力(Lift)を発生させるのに十分な速度に達します。

揚力は飛行機が空中に浮かぶために必要な力で、推力が機体を前進させることで生成されます。
この離陸時に発生する揚力と推力のバランスが正確に取れないと、飛行機は滑走路から持ち上がることができません。

離陸推力は、飛行機のエンジン性能の限界まで使われることが多く、航空機の種類によって大きく異なります。
ただし飛行機が離陸するときにいつもそのエンジンが持つ最大推力にして離陸している訳ではありません。

飛行機の重量は乗客の搭乗数や貨物の搭載量、また飛行する距離によって大きく変わります。
その重量と滑走路の長さによって離陸推力を変えています。

2.離陸推力に影響を与える要因

離陸推力に影響を与える主な要因は、以下の通りです。

2.1 機体重量

機体の重量が重いほど、離陸に必要な推力が増加します。飛行機は、離陸時に揚力が重力を上回る必要がありますが、重い飛行機ほど多くの揚力が必要です。そのため、推力を増やしてより早く滑走路を駆け抜け、必要な揚力を得る必要があります。

重量は乗客、貨物、燃料の量によって決まり、飛行機の最大離陸重量(Maximum Takeoff Weight, MTOW)を超えることはできません。過剰な重量は、推力不足や離陸滑走距離の不足を引き起こし、非常に危険です。

2.2 気象条件

気温や気圧、湿度といった気象条件も離陸推力に大きな影響を与えます。特に重要なのは気温と高度です。気温が高くなると空気密度が低下し、エンジンの効率が低下します。これにより、同じ推力を得るためにはエンジンの出力をさらに高める必要があります。高度の高い空港でも同様に空気が薄く、離陸にはより多くの推力が必要です。

湿度も空気密度に影響します。湿度が高くなると空気の密度が減少し、エンジンが吸入する酸素量が減少するため、推力の低下が起こります。

2.3 滑走路の長さ

滑走路の長さも、離陸推力に影響を与える要因です。短い滑走路では、飛行機は短い距離で必要な速度に達する必要があるため、より高い推力が求められます。反対に、長い滑走路がある場合、エンジンの出力を最大にする必要がなく、より効率的な推力の使用が可能です。

2.4 エンジンの性能

当然ながら、エンジンそのものの性能も離陸推力に直接的な影響を与えます。新型のエンジンやハイパワーなエンジンを搭載している飛行機ほど、高い推力を得ることができ、離陸性能も向上します。逆に、エンジンの出力が低い飛行機では、長い滑走路が必要となったり、限られた重量での運用が求められる場合があります。

3.離陸推力の最適化

現代の航空業界では、燃費の向上や環境負荷の低減を目指し、離陸時の推力を最適化する技術が導入されています。

例えば、「フレックス推力(Flex Thrust)」という技術では、滑走路の長さや気象条件に応じてエンジンの出力を最大限まで引き上げず、必要な推力だけを使って離陸します。これにより、エンジンの摩耗を軽減し、燃料の消費を抑えることができます。

また、航空機の設計そのものも推力の最適化に寄与しています。例えば、翼の形状や素材の改良によって揚力を効率的に発生させることで、必要な推力を減らすことができます。加えて、エンジン技術の進化も著しく、より小型で軽量なエンジンで高い推力を実現することが可能になっています。

3-1 飛行機の重量、滑走路の長さにによって離陸推力を変える。

満席や貨物の搭載量が多い時、且つ長距離を飛ぶ場合は飛行機の重量が重くなり、滑走路の長さによっては最大推力が必要になるときがあります。

一方、乗客が少ない時や短い距離の飛行では燃料をたくさん搭載する必要がなく重量が軽いため最大推力では推力が大きすぎる場合があります。
この様な時の離陸は最大推力が必要ないので最大推力の数十%減で離陸推力を決めています。

通常、Boeingの飛行機ではTO2、TO1、TOと通常3種類の離陸推力の設定があります。
これはReduced Thrust Takeoffと言っています。

TOは最大離陸推力を意味しますが、たとえばTO1はTOの10%少ないパワー、TO2は20%少ないパワーでを意味します。

これは主にエンジンのライフタイムを伸ばすために行っていますが、パイロットしてもマイルドな飛行機の動きや上昇になりますので若干操縦が楽になります。

国内線ではほとんどの場合、一番低い推力であるTO2で十分ですが、実はこの減じた推力を使ってはいけない時があります。
それはどういう状況かというと離陸経路上にウインドシェアと言う風の変化がある時です。

わかりやすい例を挙げると、積乱雲が近づくと急に風が吹き、土砂降りの雨になる時がありますが、そのような状況の時の上空の風の方向と強さはめまぐるしく変化しています。
このような時の離陸は避けるのが原則ですが、まだ積乱雲の影響がそれほどでもない時にウインドシェアの予防として減じた推力ではなく、最大推力を使う時があります。

3-2 もう一つの離陸推力の決め方、Assumed Tempreture Method。

それはAssumed Tempreture Method(アシュムド テンプレチャー メソッド)と言うものです。

この方法を簡単に言うと仮想温度を設定し、飛行機の離陸に滑走路を目いっぱい使って離陸できる推力を使用するという事です。

飛行機のエンジンの推力は温度が高くなればなるほど減少します。
推力が減少すれば離陸に必要な滑走路も長くなります。

離陸する滑走路を目いっぱい使う時の温度を計算し、その温度をもとに離陸推力を決めていきます。

4.飛行機の離陸方法には2種類がある。

ちなみに飛行機の離陸にはStanding T/OとRolling T/Oの2種類があります。

Standing T/Oと言うのはブレーキをかけたまま(止まったまま)離陸推力まで推力を上げ、Powerが安定したところでブレーキをリリースして滑走を始める方法です。
この方法は滑走路に余裕がない時や冬季運航の悪天候下で行う方法で一般的ではありません。

通常、行われている離陸の方法はRolling T/Oです。
これは滑走路に入った後、滑走路上に止まることなくPowerを離陸推力に上げ離陸する方法です。
その際いっきに離陸推力に上げるのではなく2段階でPowerを離陸推力まで上げます。
その理由はアイドルからいっきに離陸推力を上げるとエンジンの加速にばらつきが生じ、飛行機の方向性に問題が生じる場合があるためです。

一度滑走路上に止まる事もありますが、この理由の多くは離陸許可を待っているときです。

エンジンをある程度まで加速させ(大体Thrust leverを垂直の位置になる様にセットします。)、Powerが安定していれば
その後は各エンジン均等に離陸推力に加速していきます。

飛行機に乗った時にエンジンの音に注意すると2段階でPowerを上げているのがわかると思います。

5.まとめ

飛行機の離陸推力は、安全で効率的な離陸を実現するための重要な要素です。

エンジン性能、重量、気象条件、滑走路の長さなどのさまざまな要因が組み合わさり、最適な推力が計算されます。

現代の航空技術は、推力を最大限に活用しつつ、燃費の効率化や環境への配慮を考慮した最適化が進んでいます

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